◆People In The Box
6月です。People In The Box といえば、六月。
無限会社の社員になり10年が経過しましたが、ここで改めてアルバムを再評価してみようと思う。殆ど個人の主観であり、頻繁に聴くアルバム・あまり聴かないアルバムの差が出てきてしまうことを留意。かなり多いので簡潔に。
リスト
1.Rabbit Hole
2.Frog Queen
3.Bird Hotel
4.Ghose Apple
5.Sky Mouth
6.Family Record
7.Lovely Taboos
8.Citizen Soul
9・Lost Tapes
10.Ave Matelia
11.Weather Report
12.Wall, Window
13.聖者たち
14.Calm Society
15.Talky Organs
16.Things Discovered
17.Kodomo Rengou
18.Tabula Rasa
19・Camera Obscura
1.Rabbit Hole ☆★★★★
これまで聴き込んでいたアルバムの傾向を真っ向から否定するように、終始大人しいテンポの楽曲ばかりで、噛めば噛むほどクセになる系のアルバムだったなと。ニコニコ動画で「鍵盤のない、」の演奏を視聴して、ギターが面白いリズムを刻んていて印象的。捨て曲無しでコンパクトなので一番好きな曲を選ぶことができない。M1の静かなスタートも、M2の丁寧に繋いでゆく流れに、M3の壮大なコーラス、M4で後半戦スタートの合図、M5とM6はよくカラオケで歌うので(M1も含む)、割とお気に入りではある。この時から既に世界観が出来上がっていると振り返すと、インディーズながら完成度の高さに恐ろしさを感じる。
2.Frog Queen ☆★★★★
M1「はじまりの国」のMVが怖いと話題になっていた。怖いというよりは、暗い。なんとなくではあるが、MVの雰囲気は凛として時雨の「illusion is mine」に近いものを感じた。前作がポストロックなら、このアルバムは「オルタナティブロック」であり、ピープルデビュー後、初めての覚醒という立ち位置。M1~M2でテンポを上げてゆく流れが好きだ。各曲がバランスよく配置されており、代表曲を除けば「失業クイーン」「泥の中の生活」「六月の空を照らす」の一連の流れがお気に入り。ラストM9の「一度だけ」は弾き語り(しかも雑音も一緒に録音している)。このような形態での収録自体「一度だけ」だよという意味もこもってるのだろうか。
3.Bird Hotel ☆☆★★★
ライブ終幕定番の「ヨーロッパ」が収録されているアルバム。俺は「完璧な庭」より「海抜0m」のほうが圧倒的に好き。爽やかで瑞々しく、夏の涼しさが同居しているイメージ。もちろんヨーロッパも好きだが、アルバムを通して聴くことは割と少ない。
4.Ghose Apple ☆★★★★
曜日で曲が区切られていることに、当時は他に見たことが無かったので斬新だと感じた。アルバムジャケットが真っ赤で、歌詞から感じるのは「メンヘラ」。このアルバムもどれが好きかと言われたらかなり悩む。カラオケでよく歌う点では「金曜日」かな。メロディや雰囲気は「月曜日」もいいが、当時は時雨の「Still a Sigure Virgin?」や「just A moment」あたりがドンピシャだったので「火曜日」も良い。日曜日は歌詞を読んで張り裂けそうな気分だったし、読後っぽい感覚で虚無感感じた部分もあった。
5.Sky Mouth ☆☆★★★
卵料理が食べたくなるジャケット。なにかと暴飲暴食的な食欲を刺激されるシングル。ニコニコ動画に上がっていた「冷血と作法」がとても好き。間奏のメロディが歪んでいてカッコいい。この1曲だけ聴くことが多い。
6.Family Record ★★★★★★
ザ・傑作。「すごいアルバム」だと本気で思った。ピープルを誰かに勧めるならこれを真っ先に勧める。ここから前作、続編、どちらに進んでもその人をピープル沼に沈める自信がある。旅行趣味なので、旅のお供に聴くことも多かった。このアルバムの頂上は「旧市街」。ピープルというバンドを世間に知らしめた不朽のロックナンバー。MVも含めてPeople In The Boxというバンドのトリッキーな面が全面に押し出されていてエグい。カラオケでも頻繁に歌う。特に後半の「スルツェイ」「JFK空港」「どこでもないところ」は余韻と読後感が長く続く。
7.Lovely Taboos ★★★★★
俺的には前作「Family Record」の外伝だなと思った。というのも、このシングルは、シングルであるものの3曲とも主張が激しく、これまでの3人でできる事全てを詰め込んだ感が強いから。特に2曲目「市民」はギターボーカルがとにかく忙しい。必聴。いい意味で吹っ切れていておかしい。
8.Citizen Soul ★★★★★
People In The Box 第二部開幕。これまでエレキギターに重きを置いていたギターサウンドに変化が。アコースティックギターでの演奏頻度が上がり、これによってメロディーはよりクリアで繊細な音を刻み、波多野自身の声色も合わさり、より解像度が上がったなと思う。とはいえ、相変わらず不思議で難しい曲が多い。メインナンバーと思われる「ニムロッド」は芥川賞作品のタイトルにもなっているし、二コラとテスラはドラムのリズムが一瞬無音になるし、面白いがすぎる。汽笛のイントロのカラカラ音も好きだな。環境音にヒグラシの鳴き声が入ってる「親愛なるニュートン街」のおかげで、このアルバムの季節感は"夏の夕暮れ"。
9・Lost Tapes ☆☆★★★
若干「Lovely Taboos」に戻ってきた感がある。このシングルには隠しトラックがあり、タイトルは「悪魔の池袋(24時ver.)」。なぜかブクロ。「見えない警察のための」が洗剤を買いに行く曲だと聞いて笑った。単体で聴くことが多いかな。
10.Ave Matelia ★★★★★
本格的にハメてきたアルバム。俺のピープルはこっから。曲全体が夏っぽい、そして肉的な気持ち悪さも同居して、ジャケットが「血」に見えてくる。本当はスムージーらしいけど。明確にこのアルバムの中で一番好きな曲は「さようなら、こんにちは」である。ラストサビ、風に背中を押されるような、爽やかな開放感を味わえる。カタルシス効果だね。
11.Weather Report ★★★★★★
摩訶不思議ですごく面白いアルバムだった。全21曲1トラックで合計70分もあるので勧めるには難しいと思うが、これまでのフルアルバムを聴いたうえでコレに手を出してみるといい。「ようやくピープルについて分かった気がする」というリスナーを思いっきり置いていきます。まるでピラミッドやアラビアの砂漠地帯を冒険するかのように、イメージ「灼熱の砂漠地帯とウルルの岩山」。M1のイントロから初っ端シタールなので、この時点で今までのアルバムとは一味も二味も違うと突きつけられる。不思議な曲ばかり、一度使ったメロディが、別の曲にテンポアップして登場したり、歌詞が意味深だったり、なぜか地元で聴きなれた東急目黒線っぽい音が聴こえてきたり(皿)。気軽に中東や北アフリカ方面のミステリーツアーが楽しめます。余談だけど「大陸」のナレーションが安田顕っぽい。
12.Wall, Window ★★★★★
前作で砂漠の旅行が終わり、オアシスに辿り着いたかのよう。今までと比べてスッと聴きやすく、それでいて優しい歌声。それもそうで、このアルバムからはピアノがメインで登場するから。このアルバムもイメージは夏。いままでとは違い、読後は憑き物が落ちるみたいにスッキリできる。ミントですミント。しょっちゅうアルバム単位で聴くので相当気に入ってるものと思う。特に「翻訳機」「手紙」「さまよう」と「もう大丈夫」「月」が好きだ。「彼女を守るのが君だけの使命」って、今までのピープルからじゃ考えられないような素直な歌詞だし。幽霊林檎の時に比べるとなおさらに。
13.聖者たち ☆☆★★★
東京喰種の主題歌だけに、カップリング曲もダークで重々しい。音は反響しておりイノセントな感じ。曲はメリハリが少ないので、そのせいか中々覚えられない。当時はこの曲でピープルを知ったが、翻訳機共々刺さらず。ところが後日からNEVERまとめというサイトで各アルバムを紹介している記事があったため、そこからどんどん好きになった流れ。「聖者たち」と「Wall,Window」の良さを再確認したのは、かなり先になった。
14.Calm Society ★★★★★
ピープルという存在を知った頃は、これが新譜だった。ライブ会場でしか売ってないとのことで、なかなか聴く機会を得られなかった。その後ライブに参戦した際にグッズ売り場で発見したため購入。「ダイゴマンの部屋」で聴きなれたメロディの正体はこれだったか。M1「海はセメント」のイントロ、これパチンコ屋から聞こえてくる音に似てる。カラオケでも気に入ってよく歌っている。シングルの中ではリピート率もかなり高い。M2とM3も、これまでの季節的なイメージを持ったアルバムたちから一転して無季節かつ無機物感が強く、例えるとコンクリートむき出しのオブジェクト、と、海。わかりやすく言うならば、お台場の晴海ふ頭にある船着き場。
15.Talky Organs ★★★★★
めちゃくちゃ好きです。艦これの影響があったのかは定かではないが、歌詞にしろ音にしろ、どこをとっても捨て曲無しの傑作揃い。ファーストの「Rabbit Hole」と楽曲構成が似ているものの、オルガンの入り方、少ない音で厚み深みを持たせた音作り、暗→明への移り変わり、内なる秘めた暴力性と、セピア色に近しい青空と黄金色の麦畑を思い浮かべる「季節の子供」、完璧だ(マッドサイエンティスト風)。
16.Things Discovered ☆☆★★★
ベストアルバム。「木漏れ日、果物、機関車」は5月の暖かい雰囲気がある。今回の新曲は、より各楽器の持つ音色の良い部分を最大限活かせていると思う。ハイレゾ音源かな?と思っちゃうぐらい、まるで生演奏を聴いてるかのように、音がウッディーで自然的。ログハウスみたい。M2の「空き地」に関しては完全に別物。「沈黙」の再録版も、アコギの音がすごく生々しいし、より激しくなった「旧市街」再録版も、彼らリズム隊の強靭な土台があるからこそ成り立っていると言っても過言ではないくらい、安定していて凄い。後半3曲も音に対するこだわりが非常に強く、作業用BGMとして最適である。プレムジーク9月/東京は色んな意味で予想を覆された。
17.Kodomo Rengou ★★★★★★
同人サークル活動で元ネタになっているアルバム。「Wall,Window」の時のような爽やかさが消えて、季節感もまるっきりわからない。ベストアルバムやアニバーサリーイヤーを経て、メンバーの意識が変わったのだろうか、これまでに比べて格段にクオリティが上がった。無限会社がいい例だと思う。それぞれのパートにAとBと名付けたとしよう。まずAパートを単体で演奏したのち、次にBパートを演奏。その後間奏を経たラストでは、そのAパートとBパートが合体して、一つのメロディとしてリスナーを混乱の渦に巻き込んでいくわけです。ヤバイ、これは圧倒される。圧倒された。歌詞もメロディーも曲構成もなにもかも、これまでとは比にならないぐらいレベルアップしたアルバムだと思った。これまでの総仕上げとも取れるし、音作りにより貪欲さが増したとも。これに関しても「とんでもねぇアルバムがでたな」と読後に突き付けられた。おいしすぎて食べ過ぎてしまうアルバム。それが「子供連合」なのである。
18.Tabula Rasa ☆★★★★
西川口のライブハウスで聴いて、アルバムを購入して、ピープルに浸かった一日。そんな良き思い出があるアルバムです。子供連合が凄すぎて、こちらはなんだかやや「物足りない」という印象。懐胎した犬のブルースは名曲。もし聴く機会があれば、歌詞カードを読みながら聴くといい。いい意味でピープルの面白さに触れられる。
19・Camera Obscura ★★★★★
この記事を書いている時点での最新アルバム。こちらも歌詞カードを読みながら聴くことをすすめる。先行で発表された「螺旋をほどく話」はMVも相まって、余分な音を落としてよりミニマムに、3ピースロックバンドとして洗練された音楽性を示しており、成熟した中に成長性を秘めているかのような一曲だった。ダークサイドに落ちる間奏も音作りにこだわりを感じてすごく好きだ。で、発売前にトラックリストが解禁されれば何だ「スマート製品」「自家製ベーコンの作り方」「中央競人場」とかいう、タイトルからして既に面白そうな楽曲がいっぱい。それでいて聴くまで本当に予想がつかない。4年ぶりの新譜なだけに、期待値はそれだけ高かったんだなぁ。
ということでライブにも参戦し、このアルバムも沢山リピートした。特にM8~M9の流れで「ああピープルの新曲が終わってしまう」などと名残惜しく感じたのは初めてで、もっとたくさん新曲が聴きたい!と、これからもピープルを追いかけたいと思わせられた。
総評として、なにが言いたいかというと一言。
「ピープルインザボックス」はいいぞ。
これに尽きる。
PR